「デジタル実装」からわかること(2)

2024.05.22デジタル実装

デジタル実装

寄稿:株式会社QUICK

世界中から様々なデータやニュースを集め、金融・資本市場に関わる意思決定をサポートするために独自の分析・評価で価値を加え提供する。RAIDAが扱うオープンデータの収集や活用にも取り組んでいる。

第2回 「デジタル実装」からわかること

「デジタル実装タイプ 分野別事業数の比率」を使って実現可能性が高い事業を把握

今回は「デジタル実装タイプ 分野別事業数の比率」と「全国のデジタル実装事例」を使い、自・他地域の事業を比較検討して、実現できそうな事業があるかを検討してみます。

まずは「デジタル実装タイプ 分野別事業数の比率」で対象地域を「全国」、年度を「すべての年度」と選択し、全国で進んでいるデジタル実装の事業数の構成比を確認します。首位が「行政サービス」で全体の約30%を占め、「防災・インフラメンテナンス」(約16%)、「住民サービス」(約15%)が続きます(図1)。

図1

図1 全国のデジタル実装タイプ 分野別事業数の比率
出典:RAIDA(2024年3月18日利用)

次に、第1回で挙げた「岩手県」について調べてみます。左欄の「都道府県」と「申請団体」で「岩手県」を選択し、グラフ上部の対象地域を「都道府県」に切り替えます。表示の棒グラフは、岩手県内で進んでいるデジタル実装の事業比率です。「行政サービス」(約38%)が最も多く、次点が「教育」(約26%)、「住民サービス」(約8%)と続きます。全国の結果と比較すると、岩手県では「教育」に注力していることがわかります(図2)。

図2

図2 岩手県のデジタル実装タイプ 分野別事業数の比率
出典:RAIDA(2024年3月18日利用)

更に、申請団体を「大船渡市」、対象地域を「類似団体(人口規模・産業規模・地理的特性)」、年度「すべての年度」で絞って調べてみます。大船渡市での全年度での分野別事業数は4つ。教育2、防災・インフラメンテナンス1、行政サービス1で、比率は50%、25%、25%です(図3)。図4で示されたグラフを確認すると、類似団体では「行政サービス」と「防災・インフラメンテナンス」、「教育」も3事業。比率は少し異なりますが、人口規模・産業規模・地理的特性が似た地域とは、ほぼ同じ分野への取り組みが活発なことがわかります。

図3

図3 岩手県大船渡市のデジタル実装事例
出典:RAIDA(2024年3月18日利用)

図4

図4 岩手県大船渡市のデジタル実装タイプ 分野別事業数の比率 類似団体(人口規模・産業規模・地理的特性)
出典:RAIDA(2024年3月18日利用)

一方、対象地域を「類似団体(財政状況)」で検索すると、事業分野の表示が増えました。大船渡市と財政状況が似た地域では、「類似団体(人口規模・産業規模・地理的特性)」でも上位に入っていた「行政サービス」、「防災・インフラメンテナンス」、「教育」に加え、「住民サービス」、「子育て」が上位に入っています(図5)。

図5

図5 岩手県大船渡市のデジタル実装タイプ 分野別事業数の比率 類似団体(財務状況)
出典:RAIDA(2024年3月18日利用)

「全国のデジタル実装事例」で参照したい地域を検索

更に「大船渡市」と人口規模・産業規模・地理的特性が類似した近隣地域とも比較して見てみたいと思います。今回は岩手県内の「釜石市、久慈市、宮古市」とします(図6)。

同3市の詳細を確認するため「全国のデジタル実装事例」を利用します。「全国のデジタル実装事例」では都道府県や分野、事業規模のフィルター検索やキーワード検索、データのCSVファイルでの出力が可能です(図7)。今回はCSVデータを出力し、比較検討します。

図6

図6 岩手県のデジタル実装状況
出典:RAIDA(2024年3月18日に利用して加工)

図7

図7 全国のデジタル実装事例 岩手県の検索
出典:RAIDA(2024年3月18日利用)

CSVデータを加工して大船渡市と他地域3市の事業一覧を確認すると、「教育」分野はほぼ同様の内容ですが、「行政サービス」では他地域で「オンライン申請」を手掛けている違いがあります。また、他地域では「住民サービス」や「文化・スポーツ」などの分野への取り組みがあることも注目されます(図8)。

図8

図8 岩手県大船渡市と他地域3市の事業一覧
出典:RAIDA(2024年3月18日に利用して加工)

類似団体や隣接地域で比率が高い事業分野は参照事例も多いため、自地域でも実現しやすい可能性があるといえます。以上の検証を踏まえると、大船渡市と類似した隣接地域では「行政サービス」での「オンライン申請」や「住民サービス」、または「文化・スポーツ」などの分野にも取り組む事例が多いことがわかりました。

デジタル実装は、自地域をとりまく環境や財政状況などを踏まえて検討されることが前提となりますが、「デジタル実装」データを活用することで、地域課題の解決や魅力の向上に取り組むことができているのか、さらに取り組む余地があるのかなどを客観的に把握する手助けとなります。

(後編終わり)