「デジタル実装」からわかること(1)
寄稿:株式会社QUICK
第1回 「デジタル実装」からわかること
令和3年(2021年)、岸田政権の下で始動した地域が抱える課題をデジタルによって解決し豊かな暮らしを実現する「デジタル田園都市国家構想」。推進を後押しするため、新たな交付金制度として「デジタル田園都市国家構想交付金」を創設し、同年度から全国の様々な地域でデジタル実装を進めています。RAIDAの「デジタル実装」では、既に実装を進めている地域、これから検討する地域の両方にとって参考となる有益な事例データを紹介しています。
「デジタル実装状況」では、デジタル田園都市国家構想交付金を活用した事業の数や予算、採択団体数などが確認できます。 また、自地域の取組状況を、人口規模・産業規模・地理的特性または財政状況が似ている団体や、隣接地域と比較して評価することも可能です。「デジタル実装事例」では、事例の具体的な内容が見られるほか、自地域以外の全国の実装事例の検索ができます。
「デジタル実装状況」で自地域の進捗状況を客観的に把握
「デジタル実装状況」を使い、まずは地域の取り組み状況を確認してみます。左欄の「都道府県」と「申請団体」を選択し、対象地域をそれぞれ絞り込むことができます。ここでは全国で見た時、比較的申請の件数が多い「岩手県」を例に挙げ、その中でも「大船渡市」に焦点を当てて調べてみます。
「都道府県」で「岩手県」、「申請団体」で「大船渡市」を選択し、「対象分野」などを絞らず検索します(図1)。右に表示される県地図ではデジタル実装に既に取り組んでいる対象県内の市町村(緑色に着色)が把握できます。
図1
「デジタル実装状況の比較」では、自地域の事業数や総事業費(予算)を、類似団体・全国(都道府県と市区町村)・都道府県(うち、市区町村)の平均値と比較して評価することができます。
「大船渡市」では事業数が4件、総事業費が137,563千円と、全国平均と比べてそれぞれ上回っています。また、都道府県欄では県内市町村での各種平均と団体数が示されており、岩手県内では33ある市町村のうち、25の市町村がデジタル実装に取り組んでいるとわかります。
また「デジタル実装事例」では大船渡市の4件すべての事業一覧があり、概要などを確認できます(図2)。
図2
次は対象分野などの各条件を絞って、岩手県内の「大船渡市」を例に挙げて見てみます。申請団体欄で「大船渡市」のまま、「対象分野」と「サービス分類」、「年度」、「類似団体」をそれぞれ「行政サービス」と「オンライン申請窓口入力支援システム(書かない窓口)」、「2022」、「財政状況」とします(図3)。
大船渡市の2022年度でのデジタル実装状況は、行政サービスのオンライン申請窓口入力支援システムの分類で1件、総事業費は91,778千円です。大船渡市の事業件数は類似団体・全国・都道府県の平均と同じですが、総事業費が大きく上回っています(図4)。また事業の概要を確認したい場合は事業名「おおふなと版窓口改革(DX)」をクリックするとPDFで閲覧ができファイルとして保存が可能です(図5)。
図3
図4
図5
図3の地図に類似団体として表示された岩手県「久慈市」についても調べてみましょう。久慈市のデジタル実装に関する取り組みの総事業費は8,642千円(図6)。大船渡市(91,778千円)と比較すると、大船渡市が大がかりな予算を組んでいることがわかります。次に事業概要を比べて確認すると、大船渡市が同じ窓口業務でも案内から清算までの総合的なDX(デジタルトランスフォーメーション)化を目的としているのに対し、久慈市では一連業務の中でも申請書記入に関するサポートに焦点を当てていることがわかります。
図6
次回は他地域の事例と比較し、自地域で実現可能性が高い分野の検討について見ていきたいと思います。
(前編終わり)