「旅行・観光消費動向調査」からわかること(2) 連載シリーズ:コロナからの旅行回復

2024.03.06感染症回復:旅行

感染症回復:旅行

寄稿:株式会社QUICK

世界中から様々なデータやニュースを集め、金融・資本市場に関わる意思決定をサポートするために独自の分析・評価で価値を加え提供する。RAIDAが扱うオープンデータの収集や活用にも取り組んでいる。

「旅行・観光消費動向調査」からわかること(2)

(1)では主に全国の動向を確認しました。今回は都道府県別のデータを見てみます。

以下は都道府県別の国内旅行消費額のグラフですが、直近の国内旅行消費額・国内旅行者数を確認することができます。「データ」のプルダウンリストで、「国内旅行消費額」と「国内旅行者数」の切り替えが可能です。

全国のデータと同様に、背景色水色が宿泊旅行、青が日帰り旅行を表しています。積み上げ棒グラフで、都道府県別の傾向を確認できます。条件を絞り込んだ際の表示などは、全国データを表示する際と変わりません。

直近2023年Q3(7月-9月)の都道府県別の国内旅行消費額と国内旅行者数を見てみます。上位3県を見てみると、国内旅行消費額では北海道、東京都、沖縄県、国内旅行者数では東京都、北海道、千葉県という順位でした。首都の東京都とともに、いずれも上位の北海道が目を引きます。

都道府県別の動向
都道府県別の動向

サイトのサイドエリアから北海道を選ぶと、国内旅行消費額と国内旅行者数の推移を時系列の積み上げ棒グラフで確認できます。国内旅行消費額では外国人消費額、国内旅行者数では外国人訪問者数と客室稼働率を、グラフ上部でそれぞれチェックすると表示することができます。

北海道の旅行消費額
北海道の旅行者数

都道府県ごとの時系列グラフを表示する際は、積み上げ棒グラフに加え、2つの折れ線グラフを表示します。

以下は、他の都道府県と時系列の推移を比較することができるグラフです。2019年Q1(1月-3月)以降の国内旅行消費額、国内旅行者数、国内旅行単価及び外国人消費単価の推移を確認できます。

北海道の他の都道府県との比較

以下は、国内旅行者数、国内旅行消費額及び国内旅行単価について、それぞれ2019年同期比及び前年同期比の推移を確認できます。下部のボタンで2019年同期比と前年同期比を切り替えることができます。

北海道の旅行動向の変化の推移

国内旅行消費額と国内旅行者数について、北海道と他の上位2都県を実際のデータで比較してみました。北海道は「宿泊旅行」「観光・レクリエーション」で訪れた人が多かったとわかります。

国内旅行消費額合計と国内旅行者数合計
出典:観光庁の「旅行・観光消費動向調査・2023年7~9月期(確報)」(2024年1月31日発表)を加工して作成

「宿泊旅行」「観光・レクリエーション」に条件を絞ると、他県と比較して北海道のQ3(7月-9月)の旅行者数が多いことがわかります。

北海道の他の都道府県との比較

北海道の夏は比較的涼しく、雨の日が少ないので過ごしやすい環境にあります。お盆休みの期間もあり長期休暇を取りやすいので、宿泊を伴った観光目的の旅行が多くなると推測できます。

外国人消費単価で比較してみます。2020年Q1(1月-ー3月)以前は北海道の水準が高く、2023年Q2(4月-ー6月)以降では、東京都、北海道、沖縄県が回復傾向にあります。

北海道の他の都道府県との比較

外国人消費単価の内訳を見てみます。東京都は「宿泊費」「買物代」、北海道は「団体・パック参加費」、沖縄県は「交通費」が高い点が目立ちます。訪問地によっても外国人の消費目的に特徴があることがわかります。

出典:観光庁の「訪日外国人消費動向調査・2023年7~9月期(2次速報)」(2023年12月28日発表)を加工して作成

最後に、都道府県別の国内旅行単価のグラフを見てみます。国内旅行単価とは、国内旅行消費額を国内旅行者数で割った値で、旅行者一人当たりの消費額を確認することができます。以下のグラフを参照すれば、沖縄県の水準が飛びぬけて高いことが読み取れます。

国内旅行単価には交通費や宿泊費などが含まれているため、遠方地からの訪問が多く、連泊者の多い沖縄県は国内旅行単価が高くなることを裏付ける結果と言えます。

都道府県別の国内旅行単価

おわりに

旅行・観光産業は、新型コロナウイルスの影響を大いにきく受け、日本国内における旅行者は大幅に減少しました。その後、Go Toトラベルなどの施策が一定の成果を得たことがRAIDAのデータから読み取れます。

都道府県別での比較も可能です。地域別の回復傾向の違いを細かく見ていくことで、「地域観光事業支援(県民割)」の効果も検証できそうです。

また、旅行の目的や宿泊の有無による国内旅行消費額や国内旅行者数の地域差も確認できました。データの可視化によって、それぞれの特徴や志向にマッチした施策の検討に役立てることができそうです。