「旅行・観光消費動向調査」からわかること(1)

2024.01.31感染症回復:旅行

感染症回復:旅行

寄稿:株式会社QUICK

世界中から様々なデータやニュースを集め、金融・資本市場に関わる意思決定をサポートするために独自の分析・評価で価値を加え提供する。RAIDAが扱うオルタナティブデータの収集や活用にも取り組んでいる。

「旅行・観光消費動向調査」からわかること(1)

コロナ禍からの回復を測る、全国旅行支援の効果を検証

「コロナ禍」での制約が緩み、全国で人の動きや消費が回復傾向にあります。しかし、地域によって程度に差があり、回復途上の地域も少なくありません。今回は国土交通省観光庁の「旅行・観光消費動向調査」を使い、地域ごとの回復状況と全国旅行支援などの観光需要喚起策の効果を検証してみます。

検証したいのは観光需要を喚起する施策の効果であり、期待するアウトカム(結果・成果)は、「観光産業の需要や供給が感染症前水準に回復する、あるいは拡大する」となります。アウトカムを測るために、国内旅行の旅行者数と旅行消費額を指標として、新型コロナウイルス感染症が発生する前と拡大後を比較しました。

旅行者数や旅行消費額の推移を可視化して比較・分析することで、旅行需要の回復を測ることができると考えます。需要回復を成果と位置付けることで、観光需要を喚起する施策を評価し、今後の施策実施の判断に活かせると想定します。

「旅行・観光消費動向調査」から分かること

観光庁は四半期ごとに「旅行・観光消費動向調査」を公表しています。日本国内の居住者を対象に、旅行・観光における消費実態を明らかにし、観光行政の基礎資料を得ることを目的としています。

RAIDAでは、旅行種類(宿泊、日帰り)や旅行目的(観光・レクリエーション、帰省・知人訪問等、出張・業務等)ごとの旅行者数と旅行消費額、旅行単価を都道府県別に確認できます。RAIDAに未掲載の詳細データも、直接調査結果を参照することで、より細かく施策を評価できます。

延べ旅行者数・全国の延べ旅行者数の動向
出典:RAIDA、国土交通省観光庁、「旅行・観光消費動向調査(速報・確報)」

上記は全国の国内旅行者数の推移です。プルダウンリストの「旅行目的」から「観光・レクリエーション」「帰省・知人訪問等」「出張・業務」を、「宿泊有無」から「宿泊旅行」「日帰り旅行」をそれぞれ切り替えて時系列の変化を確認できます。

宿泊種別で「すべての旅行」を選ぶと、積み上げ棒グラフが表示されます。宿泊旅行の背景色は水色、日帰り旅行は青です。プルダウンの条件を絞ると絞り込んだ条件以外は、以下のようにグレーで表示されます。また、グレー以外の背景色にカーソルを合わせると、当該データの値など詳細を確認することができます。

延べ旅行者数・全国の延べ旅行者数の動向
出典:RAIDA、国土交通省観光庁、「旅行・観光消費動向調査(速報・確報)」

実際にデータを見てみます。以下は全国の旅行消費額の推移です。

旅行消費額・全国の旅行消費額の動向
出典:RAIDA、国土交通省観光庁、「旅行・観光消費動向調査(速報・確報)」

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、政府は2020年4月7日から5月25日にかけて緊急事態宣言を発令しました。2020年Q2(4月ー6月)の国内旅行者数、旅行消費額はそれぞれ大幅に減少し、2019年Q2と比べた国内旅行者数は77.5%減、旅行消費額は同83.2%減となりました。

新型コロナ感染症の拡大は長期に渡りましたが、新規感染者数は増加と減少の波を何度か繰り返しました。コロナ禍の旅行者や旅行消費にも波らしき増減が読み取れます。

例えば、2020年Q3(7月ー9月)は前の四半期に比べて国内旅行者数が133.2%増、旅行消費額188.9%増と一時的に回復しました。一回目の緊急事態宣言が5月25日に終了し、新規感染者数の減少に夏休み期間の到来が重なり、外出を控えていた人々の旅行が増加したと見ることができます。

また、この時期の回復に少なからず影響したと考えられる施策がありました。7月22日に始まった「Go To トラベル事業」です。国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金の35%を割引する支援策で、10月からは宿泊・日帰り旅行代金の15%に相当する旅行先で使える地域共通クーポンの付与も加わりました。

以下は、旅行目的を「観光・レクリエーション」、宿泊有無を「宿泊旅行」に絞ったグラフです。2022年Q2から2022年Q3にかけて国内旅行者数、旅行消費額ともに回復したことがわかります。コロナ禍の需要急減に見舞われた観光業界にとって、「Go To トラベル事業」が恩恵を及ぼしたと評価することができます。

また、旅行者数と旅行消費額のグラフを比べると、旅行消費額の背景色水色の範囲が広いことが読み取れます。観光やレクリエーション目的の旅行が、より多くの消費行動につながることを示し、観光回復が地域経済に及ぼす影響が大きいことを示します。

延べ旅行者数・全国の延べ旅行者数の動向
出典:RAIDA、国土交通省観光庁、「旅行・観光消費動向調査(速報・確報)」
旅行消費額・全国の旅行消費額の動向
出典:RAIDA、国土交通省観光庁、「旅行・観光消費動向調査(速報・確報)」

2022年12月に「Go To トラベル事業」を一時停止するなど、政府によるコロナ禍の観光施策は感染者数の増減により停止や実施を繰り返しましたが、2021年4月以降は「地域観光事業支援(県民割)」が実施され、2022年10月11日からは「全国旅行支援」を開始しました。旅行需要を喚起する意思を継続的に示し続けたと受け止めることができます。

旅行消費額は、2021年Q3(7月ー9月)から2021年Q4(10月ー12月)にかけて再度増加し、2022年Q3には2019年当時の水準をほぼ回復しました。新型コロナウイルス感染症の新規感染者数の推移に左右されていた2021年前半までとは、傾向が変わったことが読み取れます。

全国の旅行消費額と新型コロナウイルス感染症の新規感染者数の比較
出典:厚生労働省(2023年9月29日に利用)とRAIDA、国土交通省観光庁、「旅行・観光消費動向調査(速報・確報)」を加工して作成

旅行目的が「観光・レクリエーション」、宿泊有無では「宿泊旅行」を選択した場合における、2023年Q2の国内旅行者数(確報値)は、2019年Q2と比べ5.5%減、旅行消費額は同4.7%増でした。旅行の回復傾向は続いています。

2023年3月13日以降にマスク着用が個人の判断に委ねられ、全国旅行支援が継続する中、行動制限のないゴールデンウィークを迎え、観光・レクリエーション目的での旅行が増加したと考えられます。5月8日には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類がインフルエンザ等と同じ「5類」に変わりました。人々の行動心理の変化を後押しする材料が続いています。

次回は都道府県別での検証をしてみます。

~(2)に続く~