「食料」高の主役は沖縄に 輸送費高騰、自給率の差も影響 連載シリーズ:止まらぬ物価高(1)

2023.10.02物価高騰・円安

物価高騰・円安

寄稿:株式会社QUICK

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第1回 物価の地域差示す指数、「食料」は沖縄が最も高い

日本にインフレの波が迫っています。さまざまな商品の値上げが相次ぎ、長く続いたデフレ環境に慣れ切った消費者の意識も変化しているようです。連載シリーズ「止まらぬ物価高」では、国内で進む物価高の実態を、品目や地域ごとに焦点を当てて探ります。

総合では東京都が10年連続全国トップ

総務省は今年6月に2022年の消費者物価地域差指数を公表しました。同指数は物価水準の地域間の差を表します。「総合」の物価水準(全国平均=100)が最も高いのは東京都の104.7、最も低いのは宮崎県の96.1でした。東京都は10年連続で最高、宮崎県は5年連続で最低となり、全体で見ると、ここ数年の間、物価の地域差の傾向に大きな変化は見られていません。首都圏など、大都市を擁する都道府県では高く、九州は比較的物価が安いようです。

「総合」の物価水準
出典:総務省、「小売物価統計調査(構造編)」(2018年~2022年)を加工して作成

費目別に見ると、東京都の「住居」の物価水準は130.7と全国で最高でした。2番目に高い神奈川県(114.8)と比較しても大幅に高く、最低の香川県とは1.60倍の差がつきました。都心の住宅価格は資材の高騰や円安で現在も上昇が続いています。不動産経済研究所によると、2023年1~6月の東京23区の新築マンション価格は平均で約1億2900万円となり、調査開始以来、初めて1億円を超えました。一方、宮崎県は「教養娯楽」などの物価水準が全国最低で、「住居」も90.5にとどまりました。

食料指数、2022年は沖縄県が1位 輸送費が高額に

費目別指数は10項目に分かれており、住居や教養娯楽のほかに「光熱・水道」や「保健医療」「教育」などがあります。今回のコラムでは、2023年7月の指数が前年同月比8.8%上昇するなど他項目と比べても高い上昇率が続く「食料」指数に着目します。食料指数は、食品の価格の変動を示す指標です。

過去5年分(2018~2022年)の食料指数を地域別に確認したところ、最も物価水準が高いのは2018~2020年が福井県、2021年が福井県・沖縄県(同水準)、そして2022年が沖縄県でした。以下は、5年連続で上位5位に入った4都県の食料指数をグラフで表したものです。新型コロナ禍前後をまたぐ期間で、徐々に順位が逆転していることが分かります。2019年には4位と東京都よりも下位に位置していた沖縄県が、なぜ1位に上昇したのでしょうか。

「食料指数」が特に高い都県の推移
出典:総務省、「小売物価統計調査(構造編)」(2018年~2022年)を加工して作成

沖縄県の食料価格が上昇した主因は、2022年に深刻化した輸送費の高騰だと考えられます。沖縄県は海に囲まれているため、県外で生産、加工などされた食料品はすべて海上もしくは航空輸送により県内に入ります。そのうち海上輸送が占める割合は99%となっています。

2022年は、沖縄県内の食料品調達に欠かせない船や航空機を動かすための燃料が高騰しました。原油価格の国際指標である米WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は、2月のロシアのウクライナ侵攻をきっかけに大きく上昇し、3月にはリーマンショックがあった2008年以来13年半ぶりの高値を付け、6月にもさらに上昇する場面がありました。2018年以降の推移を見ると、2022年の上昇がいかに大きかったかがよく分かります。

原油価格の推移
出典:QUICK(2023年9月1日時点)のデータを加工して作成

沖縄県と同様に、貨物の9割を海上輸送に頼る北海道にも同じ傾向が見られます。北海道の食料指数の全国順位は2018年時点では22位でしたが、2022年には8位と大きく順位を上げました。

低い自給率、食料価格上昇を後押し

食料価格の地域差には食料自給率も影響します。自給率が低いほど他都道府県からの調達が必要になり、その分コストが上乗せされるため価格は高くなります。2018~2021年まで食料指数が全国1位だった福井県は、4年連続で生産額ベースでの自給率が全国平均を下回っていました。米の自給率が高いため、カロリーベースでは全国平均を上回っています。

食料自給率 カロリーベースと生産額ベース
出典:農林水産省、「都道府県別食料自給率の推移(カロリーベース、生産額ベース)」を加工して作成。カロリーベースは国民ひとり当たりの1日の摂取カロリーのうち国産品が占める割合、生産額ベースは国民に供給される食糧の生産額に対する国内生産の割合を示す

沖縄県に関しては、カロリーベースと生産額ベースの両方で全国平均を下回る推移が続きました。2022年度の結果はまだ公表されていませんが、食料自給率が低いために、輸送費高騰の影響をより強く受ける可能性が高そうです。

2023年12月の食料CPIは117.3、全国平均超え続く

2023年12月の沖縄県那覇市の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は総合で108.1、食料で117.3でした。これは同月の全国CPI(総合106.8、食料115.2)より高く、全国平均を上回る水準が続いています。RAIDAで那覇市と全国のCPIを比較すると、食料指数は直近1年間のうち毎月、那覇市の方が高くなっていることが分かります。

那覇市と全国の比較
出典:RAIDA、総務省(2024年1月23日に利用)

生活の基礎となる「衣食住」のうち、食品の価格高騰は、住民の日常生活に大きな影響を与えていると考えられます。地元紙の沖縄タイムスによると、沖縄県は新型コロナの影響で収入が減った人に資金を貸し出す国の制度「特例貸付」の利用者が人口当たり全国最多でした。観光需要が徐々に戻り沖縄経済は回復傾向にありますが、物価高がコロナ禍で生活に余裕がなくなった県内住民の「買い控え」を招き、経済や住民生活の回復に水を差す恐れもありそうです。